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軽井沢スキーバス事故 注目の国交省の対応

 今年2016年1月15日に起きた長野県軽井沢町で発生したスキーバス事故(乗客13人、乗員2人死亡)。国土交通省やバス業界は事故を未然に防ぐ新たな対応策の検討に迫られている。しかし2012年4月29日に発生した関越自動車道における高速ツアーバス事故と比べると業界内は穏やかだ。

 関越バス事故では、「高速・貸切バスの安全・安心回復プラン」や「バス事業おあり方検討会」、「貸切バス運賃・料金制度ワーキンググループ」、「自動車運送事業者に対する監査のあり方に関する検討会」、「高速ツアーバス等の過労運転防止のための検討会」など数多くの検討会があり、長期間に渡り入念に検討され、動きについていくのが大変なほど話し合われたこともあるだろう。また残念ながら人が自動車を運転する限りは大きな事故を起こすようなヒューマンエラーは定期的に起きてしまうものだと認識し最善策を検討する必要があるということを認識するしかないということもあるだろう。

 国交省は「軽井沢スキーバス事故対策検討委員会」の第一回目を1月29日に開催し、7回の検討会を経て、3月29日に「軽井沢スキーバス事故対策検討委員会における中間整理」を発表した。事故に関係することで明らかになっている事柄から、検討事項を抽出し、対応策が検討された。

 明らかになっている事柄は①事故発生前に実施した監査や処分で 是正を指示していたにも関わらず、 事故発生後、安全管理上の問題を確認されたこと②長年大型バスの乗務経験が 乏しい運転者が乗務していたこと③届出運賃の下限を割った 運賃による運行を行っていたこ④ドライブレコーダーや衝突被害軽減 ブレーキ等が搭載されていない 車両による運行を行っていたこと。

 そこから抽出された検討事項は、貸切バス事業者に対する事前及び事後の安全性のチェックの強化 、運転者の技量のチェックの強化 、ハード面の安全対策の充実 、旅行業者等との取引環境の適正化 、利用者に対する安全性の「見える化」の5点。

 速やかに講ずる対策として、①事業許可の取り消しなどの厳しい処分の実施②輸送の安全に特に係る事項を中心とした処分量定の引き上げ③貸切バス事業者と旅行業者間で取り交わす書類において運賃・料金の上限・下限額の明記、また手数料などの確認④運賃・料金の情報に関する通報窓口の設置⑤新たに雇い入れた全ての運転手に対する適性診断の義務付け⑥初任者及び事故を起こした運転者に対する実技訓練の義務付け⑦ドライブレコーダーによる車内外の映像の記録・保存、当該映像を活用した指導・監督の実施の義務付け⑧シートベルトの着用徹底や補助席へのシートベルトの設置の義務付け。

 中でも⑦のドライブレコーダーの義務付けは、貸切バス業界は事業規模が小さい事業者も多いので負担が増えるとの懸念の声が聞こえる。一方でこのバス事故を受けて新たな車両技術の進展があった。国交省はドライバーが急病等により運転の継続が困難になった場合に自動車 を自動で停止させる「ドライバー異常時対応システム」のガイドラインを世界に先駆けて策定した。

 バス事故が起きるたびに、当たり前のことかもしれないが、これまでの議論や検討の見直し・前倒し・強化が行われる。バス事業やその運行管理と車両を含めた周辺機器も大きく進化した。なかなか事故は未然に防げないとしても、技術や合理的な施策により、バス事故による被害者が1人でも減ることを期待したい。

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