千葉ドローン宅配、2019年ビジネス化目標に
ネット通販大手のアマゾン・ドット・コムが商品の配送を検討していると公表したことで注目されている無人飛行機(ドローン)宅配。これまでドローンは情報収集が中心だったが、モノを運ぶ新しいステージに入り、日本をはじめ世界中で実証実験が開始されている。
しかし実証実験はいずれも山間部や離島などで、人口密集地域での実証は行われていない。都市部の高層マンションへのホームデリバリーに挑戦しているのが千葉市だ。2019年を目標に実際にビジネスを開始したいと意気込んでいる。
国家戦略特区に指定されたことを受けて開催された「千葉市ドローン宅配分科会」には民間からは、自律制御システム研究所、イオンリテール、ウェザーニューズ、SGシステム、NTTドコモ、佐川急便、タイプエス、日本電気、三井不動産レジデンシャル、楽天が出席した。
楽天はEC事業者ならではの視点でユーザー目線とIT技術を駆使して実用的かつ安全で便利なサービスの実証実験を重ねノウハウの蓄積を行い空のイノベーションを起こしたいと期待を寄せる。楽天は自律制御システム研究所に出資した。東京大学エッジキャピタルと合わせると自律制御システム研究所の資金調達は総額7億2,000万円にのぼる。律制御システム研究所はドローンの研究開発・製造・販売・ソリューションを手がける大学発ベンチャーで、1998年から千葉大学の野波健蔵特別教授の研究室で培われてきた完全自立型ドローン技術を応用し、産業利用のできる純国産ドローンでの市場獲得を目指している。
実証実験の内容は主に2つに分かれる。長距離水平飛行(市川~幕張の約10km)短距離垂直飛行(若葉住宅地区)だ。アメリカのNASAのUTM計画が進行しており、それとも連携して進めたい考えだ。UTM計画は4段階あり、Build1無人地域での運航など(~2015年8月)、Build2人口低密度地域での運航など~2016年10月)、Build3人口中密度地域での運航など(~2018年1月)、Build4人口高密度地域での運航(~2019年3月)だ。
これからの実証で重要になってくることは次の通り。陸上輸送と異なり風速や風向きそして電波障害などだ。また陸上輸送と同様に要となるのがドローンの運航管理システムで、2019~2020年ごろからビジネスを開始できるかどうかはこの点にかかっている。その他、物流用ドローンの安全基準の策定、保険制度やプライバシーになどの法整備も必要となる。
取材を通して見えてきたことは、当然のことだがビジネスとして成立するかどうかが要となる。既存の陸上輸送と比較しどれだけ顧客メリットや企業にとっては売上につなげることができるかが重要となってくる。ドローンやその運航管理システムの開発費も導入期では高額になる。そうなると企業の先行投資や人口密度が必要で、人口密度の低いところではドローン宅配サービスが展開されない可能性も高い。今後3年間でサービス開発がどれだけ進むかアメリカの動向も含めて注目だ。