ゴルフの足がまちを活性化する生活の足に~輪島でヤマハのゴルフカート自動走行~

November 29, 2016

2016/11/29

 

  ゴルフプレーヤーならおなじみのあの乗りもの。ゴルフカートが日本の地域内移動に一役買うかもしれない。ゴルフカートはビジネスマンの縁側。ゴルフを楽しみ取引先相手のプライベートを聞き出しお近づきになったり、さらには商談に発展したり。ビジネスマンには大切な社交の場だ。それが暮らしの縁側になり社交の場としての存在になりつつある。

 

  2016年11月15日に輪島市で公道上で「運転支援システムとしての電磁誘導式自動走行による新たな交通システムの実証実験」が始まった。ヤマハ発動機のゴルフカートを使用。自動運転は有人のレベル2。レベル2での自動運転の最高速度は12km/h。期間は2016年10月~2017年3月。目的はその社会受容性調査だ。この公道におけるレベル2のゴルフカート自動走行は、日本のみならず世界初のできごとだ。ヤマハの関係者は「公道での電磁誘導は実現しないと思っていた」とこれまでを振り返る。

 

  日本の地域交通の悩みは、民間のバス事業者が撤退した不採算路線を、地域に欠かせない移動手段として行政が負担して走らせているコミュニティバスの運行費用がかさむ一方で、利用者が伸びないことや中心市街地の活性化など副次的な効果につながらないことだ。また観光立国をめざし日本人や外国人観光客を呼び込み少しでも地域内を周遊したり消費してもらうためにも、クルマの外とつながり、空に触れ、においをかぎ、地域のひとと触れ合いながら、ゆっくり風土を楽しんでもらいながら、いろいろなところに周遊してもらう移動手段がないことも悩みだ。既存のバスとタクシーという車両とサービスのみだけでは、現在の社会課題が解決できないのかもしれない。バスでもない、タクシーでもない、鉄道でもない、社会の変化とともに新しい車両、交通システムを育てる必要がある。新しい地域内モビリティシステムが輪島で生まれようとしている。

 

 

 

  輪島市でのゴルフカートによる自動走行をけん引してきた輪島商工会議所会頭の里谷光弘氏は「ゴルフ場でヒントを得ました。高齢者は送迎を人に依頼するのに気が引けるんです。ゴルフ場のようにゴルフカートが自動で市内を15分間隔でぐるぐる回ってきたらどうでしょうか。中心市街地をゴルフ場のハーフ(9ホール)と想定してそこにゴルフカーを走らせる。例えば病院コース、買い物コースなど。すると高齢者が外出するようになる。市内の経済も活性化するだろう。バスとタクシーの関係だが、中心市街地をゴルフカート。そのフィーダー的な役割をバスやタクシーが行えばどうだろうか」とイメージを語る。

 

  技術的な話になるとゴルフカートもパーソナルモビリティだ。なぜならアメリカではセカンドカーとしてフロリダ州のThe Villagesという地区だけでも 6万台近くのゴルフカートが活躍しているほか、ジョージアナ州のPeachtree Cityでは高校生たちの通学の足としても活用されている。ヨーロッパでもゴルフカートから着想を得た多様なモビリティが製造販売され地域内移動に重宝されている。原付と軽自動車の間の新しい小型モビリティの実証実験がはじまったと同時に日本でもゴルフカートが注目されはじめた。輪島市では2014年度から軽自動車ナンバーを取得したゴルフカートをキリコ会館コース、輪島病院コース、塗めぐりコースの3コースを調査走行させてきた。大分県の姫島や青森県の十和田市の奥入瀬渓流でも試験運行されている。

 ※写真提供:ヤマハ発動機 上写真(フロリダ州)、下写真(ジョージアナ州)

 

  自動運転についても、ヤマハ発動機では電磁誘導線を敷設、車両の自動運転簿ボタンを押すと電磁誘導線をトレースして走行を行う電磁誘導方式の自動運転で約20年の実績がある。自動車メーカーが検討している新技術とは異なる。きわめて原始的な方法であるが、安全で身近な移動システムとして、ゴルフ場や遊園地などで利用されてきた。これから半年間行う実証実験でも、ゴルフ場で活用されている電磁誘導式の自動運転システムをそのまま採用する。ウインカー、停止、スピードの指示は路面に埋め込んだ永久磁石で出させる。人が介在して、自動走行からマニアル操作に切り替えられるオーバーライド機能が3つ(ブレーキ、アクセルペダル、ステアリング)付いている。

 

 

  この輪島市での電磁誘導式自動走行による新たな交通システムの実証実験を運営する次世代交通対策協議会のオブザーバーには石川県警察本部、石川県輪島警察署、北陸信越運輸局なども入っていて、しっかりとした協力体制ができている。2017年3月までの実証実験の目的はその社会受容性調査だ。レベル2の有人走行であるが、レベル4の完全自動運転になったときに、これまで19km/h程度の速度を出しマニアルで調査走行してきたが、12km/hで運行したときの安全性や他のモードと混在は可能なのか、遠隔操作が必要か、車両はゴルフカートでいいのか、事業モデルはどのようなものが良いのかなどを検討する予定だ。現状では有料による運行は免許、事業資格などの問題があり難しい。

 

  輪島商工会議所会頭の里谷氏は「ゴルフカートは橋と同じ。住民サービスだと考えます。既存の移動サービスに代わる、新しい住民向けサービスを住民以外が負担し導入することで、経済効果や福祉効果などが見込めると考えています。また高齢者の事故が増えていますから、今は免許を返納すれば生活すら困る状況ですが、ゴルフカートがまちなかを走るようになれば、免許を返納する人も増えるのではないでしょうか」と期待される効果を話す。輪島市が取り組むのには高齢化と人口減少という切実な悩みが背景にある。

 

 

  ヤマハ発動機はこのような動きに合わせて、日本の社会や移動の価値観の変化に応じて新しいコミュニティ向けの移動体のコンセプト06GEN CONCEPTを作り、しまなみ海道の伊東豊雄建築ミュージアムで今年7月に試験運行を行った。プラットフォームは輪島市で使われるゴルフカートと同じ。「人々をあたたかく招き入れ、行き先へと運ぶ」をテーマに、日本独特の建築文化である「縁側」をコンセプトに取り入れ、内でもなければ外でもない、曖昧な空間を乗りものに取り入れた。実際に乗った観光客からは「できるだけゆっくり!もっとゆっくり走ってほしい!」とコメントがあったのだという。ヤマハの関係者は「ゆっくり走ってほしい!と言われるそういった領域を広めていきたいと考えています」と話す。

 

 

 

 

 

 

 

  これからの暮らしと社会にちょうどいい、新しい車両による新しいモビリティシステムが上手く育つように、あたたかい目で見守りたい。

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