活動格差社会がもたらす交通需要予測 悲観的に見るか変わるチャンスと思うか

September 6, 2016

 将来の交通需要予測の考え方を見直さなければならない。大きなインパクトのあるシンポジウムが9月6日に行われた。土木計画学の生成原単位研究会が開いたものだ。一人のひとが一日に行う交通行動(生成原単位)は性別や年齢別では変化しないと考え、その考え方に基づき将来交通量の推計などが行われてきた。しかしどうやらこの原則が最近の社会環境により崩れてきているのだ。この10年間に20~40歳代の一人のひとが一日に行う交通行動がそれ以降の世代と比較して減少していることが明らかになったからだ。人口減少に加えて、一日に行う交通行動(生成原単位)が減少し、生成原単位研究会は2030年には鉄道は20%減少、自動車は17%減少すると予測している。公共交通事業者や自治体などの事業、人事、組織などの戦略が今のままで良いのか今一度立ち止まって考えなければいけないのかもしれない。

 

 このシンポジウムは「生成原単位減少の背景と社会的な意味を探るシンポジウム」で、生成単位研究会メンバーの土井勉・大阪大学特任教授の司会のもと、西堀泰英・豊田都市交通研究所主席研究員の基調報告、原田昇・東京大学大学院教授の基調講演、そして谷口守・筑波大学大学院教授、菊池雅彦・国土交通省都市局都市交通調査室長、白水靖郎・中央復建コンサルタンツ取締役が加わったパネルディスカッションで構成された。一日に行う交通行動(生成原単位)は、ある地域に居住する人が行ったトリップ数(生成量)を総人口で割ったものだ。外出率はある地域の外出人口を総人口で割ったもの。若者の外出にはどのような変化があるのか。西堀泰英・豊田都市交通研究所主任研究員が基調報告(京阪神都市圏(近畿圏)のパーソントリップ調査データと独自に行ったアンケート結果、各種統計資料から分析したもの)から紹介する。

 

 

若者の外出にどのような特徴があるのか

 若者世代(20~30歳代)が一日に行う交通行動(生成原単位)は三大都市圏(京阪神都市圏、東京都市圏、中京都市圏)で共通して減少するが高齢者で増加。外出率は東京都市圏では若者は横ばいであるものの、他の二都市で若者世代で減少し、高齢世代で増加。休日の移動も若者世代で大きく減少し、さらには衝撃的だったのは自動車利用が半分程度まで減少していることだ。

 

 

若者の外出が減少した要因は何か

 西堀氏によると若者の一日に行う交通行動(生成原単位)が減少した要因は世帯構成・職業、居住地域・自動車保有が影響していることが明らかになった。若者のクルマ離れが話題となったように、自動車の購入・維持費用が高額だったり、自動車を使う必要性を感じない若者が増え、免許取得すらもしなくなってきている。また外出回数には所得、友人の有無、職業が影響している。社会問題として大きく取り上げられているように非正規写真は正規社員に比べて月収が低く、友人関係や交際相手の有無にも所得が関係しており、その数は増加傾向にあるため、全体として外出控えが増えることになる。不都合の真実として紹介されたのは、ネット通販の利用頻度が多いと、日常的買い物回数も多く、行動回数が多いほどネット利用時間が長い人の割合が大きいことだ。活動しない人は外出もネットも運動も少なく、活発でない人はどんどん社会の関係が希薄化するのではないかと懸念される。

 

 

 

どのような移動がどう減少するのか

 また生成原単位研究会は一日に行う交通行動(生成原単位)は特に大きく減少している30~34歳に着目にしている。男性は無職が増加し、女性は就労が増加。一日に行う交通行動(生成原単位)は男性より女性が大きいが一方で女性の減少の方が大きく、免許取得者に着目すると男性では生成原単位が減少し、女性は就業者も無職者でも減少する。外出率は、免許なしの男性で増加し免許ありで減少し、女性は無職で減少する。就業者は主に出勤と帰宅の間の移動が減少し、女性は複数回外出する人が大きく減少する。

 

 

 

 

社会構造の変化に沿った柔軟な戦略を 悲観的に見るか変わるチャンスと思うか

 おそらく若者層の外出や活動量は、それ以降の年齢層と比較すると減少傾向にあることは肌で感じる人も多かったのではないだろうか。研究として定量的に実証されたことは大きな裏付けとなり、この社会変化に応じた戦略の検討を進める助けになるだろう。需要と供給のバランスが取れてさまざまな移動サービスやその環境づくりが成り立つ。高齢者への移動サービスを考えるとともに、これから先も多様な選択肢のある暮らしやすい環境を維持していくためにも、この40歳代未満の外出を育てていく戦略をセットで検討していかなければ、将来的な需要が大きく減少し、事業存続が難しくなる可能性も大いに考えられる。また渋滞対策や道路の再配分もこれから変わってくるだろう。

 どのように40歳代未満の移動をどのように育てるのか。原田昇・東京大学大学院教授は「若者の暮らしの変化など社会構造の変化に対応してこなかった。若者は行くところも余裕もなくなってしまっていいる」と話す。このように高齢者へのサービスを重視し、この年代層のニーズを組んでこなかった経緯がある。だからこそ少しの努力で大きな変化も見込める可能性もある。人口減少と外出の減少と相まった結果に、ついついこれまでの移動サービスにマイナスのイメージばかりが蔓延し悲観的になりがちだ。しかしGoogle、DeNA、ソフトバンク、UberなどICT関連に強い企業の移動に関係する新規参入が活発化している。名だたる注目企業ばかりだ。それだけ人の移動にはまだまだ手つかずのニーズとそれを具現化するサービスが無限に存在することを念頭に置きたい。

 また一日に行う交通行動(生成原単位)の減少や免許保有取得の減少などに合わせて、住宅、都市政策などとのセットで密度を上げていく対策や、密度をあげれない場合は、それに代わる福祉などのサービスやソーシャルキャピタルの活用などを組み込んでいき、より生活がしやすく魅力的なまちへと作り上げるきっかけと考えれれば有意義だ。

 

 

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