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JR東日本の授乳室やおむつ交換スペース、トイレはここまでステキ!~子育てママ・パパの声を取り入れる工夫~

栃木の民芸品の野州てんまり」「黄鮒(きぶな)の張子」をふんだんに使った装飾。水と緑と大地」を思わせる内装。高原に広がる広葉樹をイメージして大きな木のオブジェを設けた壁面。地域の魅力を意識した贅沢すぎる内装にびっくり。ここは2015年冬と2016年春にオープンしたJR東日本の新幹線コンコース待合室に設けられたベビー休憩室の中。順に宇都宮駅、小山駅、那須塩原駅です。広さは20~23平方メートル。授乳室、流しと給湯器、おむつを替えるスペース、子ども用のトイレ、子どもが遊べるキッズスペースがあります。キッズスペースではおもちゃで遊べて窓から通過する新幹線を眺めれたり、待ってくれているパパや家族の居場所もちゃんと用意してあります。安全面はもちろんのこと細かなところにもママだけではなくパパなどの家族目線を感じる、乗り換えや乗車前に見てみたいなと思うような、JR東日本スタッフの思いやりがいっぱい詰まったところです。

 小さな子どもを連れてのお出かけはひと苦労。特に公共交通が便利なまちでは、クルマを使わずエコな移動をしようとすると自然と両手や背中で荷物がいっぱいに。子どもが小さければおんぶしたり抱っこしたり、ベビーカーがあったり。だから思うように歩いてくれない子どもと荷物のことを思うと、子どもを生まれたことを契機にクルマを買ったり、クルマでお出かけしやすい郊外に住んだりと、子どもが生まれた時がライフスタイル転換期になります。

 まちなかでのお出かけのときの大きな困りごとの一つは、授乳、おしっこやうんちのおむつ替えやトイレ。だから食事や休憩する場所を選ぶ時もおむつ替えや授乳ができたり、子どもが騒いだりしたりしても良い場所を探したり。行きたいお店になかなか入れないなど、気を遣うシーンかたくさんあります。その中でもとりわけ電車やバスなど公共交通のトイレは、どこか「自宅や他のお店で済ませて使わないで」といった暗黙のメッセージがあるようで、何だか使いにくいな、使いたくないというイメージがあるのではないでしょうか。

「どんどんトイレを使ってください!」

 ところが北陸新幹線金沢開業、北海道新幹線函館北斗開業を見据えて、2014年度より新幹線停車駅で、ベビー休憩室、喫煙室の整備やトイレの改修を進められるなど、少しずつ電車のトイレや授乳室が驚くほどに進化を遂げています。宇都宮駅、小山駅、那須塩原駅の新幹線コンコース待合室に設けられたベビー休憩室づくりについて、JR東日本大宮支社にうかがいました。ご担当くださったのは、トイレや授乳室などの設備関係に携わっている、大宮支社の旅客設備課長の真保聡裕さんと、産休を目前に控えた同課建築グループ副課長の中人美香さんです。お二人のお話しに何度も出てきた意外な言葉は「たくさんの方にトイレを知っていただきたい、ご利用いただきたいです」でした。電車の駅のトイレはあまり使ってほしくないのかなと思っていたので驚きました。会社が民営化されてから消費者目線の取り組みを重ねてきた結果、駅を利用した方が実感できるくらい使いやすいトイレや授乳室の整備が徐々に進んできているだそうです。

子育て中のパパ・ママ社員が大活躍

 子育てパパ・ママが利用しやすい公共交通づくりは実はようやくはじまったところ。昔は随分と子どもの数が多かったのに子育て問題が大きく取り上げられなかったのだから、わざわざ子育てに関することを分離して取り上げなほうが良いのではないか、今は少し過敏になっているのではないかという声もあります。一つ言えることは、これまでは都市部では通勤や通学、地方では高齢者が使いやすい公共交通が中心に検討されてきたように感じます。東京都心部では「小さな子どもと電車に乗るのは考えられなかった」という声も聞きました。バリアフリー化が進みベビーカーを折りたたまずに駅構内や車内を利用することに対して、世代間ギャップがあることも分かってきました。クルマ離れ、所得の減少、世帯規模の減少、コンパクトなまちづくり、少子化対策、女性の社会進出などを考えるともっとハードとソフトの両面から子育てしやすい、まちなかの移動環境づくりの検討が必要なのではないでしょうか。

 子育てママ・パパの声を拾うのはなかなか難しいと多くの方が頭を抱えています。子育てママ・パパは子育てと仕事の両立など毎日を乗り越えるので精いっぱいだったり、大変な子育て時期も我慢でなんとか乗り越えれてしまったりもするので、声が集まりにくかったり、意見を引き出しにくかったりするようなのです。自治体の交通戦略などに対する意見を募集しても、若年層、子育て層、女性から声は上がらず、反映されないものになってしまいがちです。

 JR東日本大宮支社のみなさんが宇都宮駅、小山駅、那須塩原駅のベビー休憩室を検討するにあって活躍したのが、それぞれ違う部署で働いているパパ・ママ社員でした。前例もなく自由な発想で取り組める施策だったようで、大宮建築技術センターで働いているパパ・ママ社員と独身者を含めた5名のメンバーを選出してワーキンググループを立ち上げたり、月に一回開催しているママランチ会でも検討をなさったようです。「お子さま連れのお客さまのご旅行を快適にしたい」という社員の思いと、子育てという実生活での経験が融合する取り組みで、検討に携わったスタッフの充実感も非常に高いプロジェクトだったということです。それぞれ違う部署であったことや、ママだけではなくパパや独身者と検討したところがキラリと光るところだと思います。

 違う部署のパパやママが一緒に検討した結果生まれたものがたくさんあります。例えば、子どもとの外出は荷物が多くなってしまうので、駅のコンビニNew Daysで紙おむつの販売もこれをきっかけにはじめることになりました。また運行状況などの案内などをしやすい場所にベビー休憩室を設置した方が、パパやママ、駅スタッフにとっても良いのではということで、ベビー休憩室が待合室の中に設置されました。さらに清掃スタッフの方からは「清掃は私たちががんばるから床は滑りにくいものにしてほしい」との意見も。

 会社の仕組みや可能か不可能かのちょうど具合を知りながら、毎日の仕事を通し考えるアレコレや子育てを通して感じる利用者目線のアレコレを知っているのは、やはり社員なんだということを、お二人のインタビューから感じました。

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